家庭的な事情から入所する子どもを養護する現場

■児童養護施設
 児童養護施設は、乳児を除いた保護者のいない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を必要とする児童を入所させ、養護することを目的とした施設です。
 現在、児童養護施設は、親の離婚や家出、病気や養育の放棄、虐待などで家庭がありながら家族と共に生活できなくなった子どもたちが、仲間と共に施設の中で生活し、地域の小学校、中学校、高等学校に通っています。特に最近は、入所してくる子どものもつ問題は複雑です。そのいくつかの例を見てみますと、近年増加傾向を示しているのが父子家庭です。親の蒸発のうち70%が母親の蒸発です。父親ひとりでは養育に困難をきたす場合があります。そして、こうした家庭の子どもが入所することが多くなっています。また、増加傾向を示しているものに、養育能力のない親による虐待、暴力、放任など、子どもの権利が侵害されているケースがあげられます。
 さらに、こうした家庭の状態から、子ども自身も多くの問題を抱えています。登校拒否や問題行動などをはじめ、養護施設に入所することが適当なのか、教護院が適当なのか、あるいは知的障害児の施設がよいのかなど、非常に判断の難しい子どもたちが増加しています。
 児童養護施設は、2歳以上18歳未満の児童を対象とした施設です。年齢幅も広く、それぞれの年齢に応じた生活指導をはじめ、学習指導など、子どもが社会的に自立していくための広範囲の指導が求められます。
 また、入所している児童は、家庭に問題をもち、本来の養育の場である家庭で過ごすことができないわけですから、家庭的な機能が求められます。保育士は、指導だけにかかわらず、子どもの生活全般にかかわる重要な役割を担わなければなりません。すなわち、家庭内で母親が果たす役割をも果たさなければならないのです。それは、洗濯や掃除といった身の回りの世話だけではありません。子どもが安心した人間関係を築いていくための基礎づくりが必要なのです。そのためには、保育士をはじめとする、職員との信頼関係を築いていくことが重要といえます。